≪訪問の理由≫
長崎の老舗文具店である石丸文行堂。1883年創業で、もうすぐ140周年を迎えられます。まさに140(イシマル)ですね。
石丸文行堂様のホームページ
そんな歴史のある石丸文行堂は、文房具関連の商品に関して常に新たな取り組み、チャレンジを行っていることから、営業企画室のクリエーター・宮崎有沙さんにお話を伺ってきました。
きっかけとなったのは「岩下の新生姜」とコラボしたインク(別ウインドウが開きます)です。 コロナ禍でリモート勤務を行っている中、おやつに岩下の新生姜を食べていた時にふと、「この色and香りのインク作ったら斬新すぎる…!?」と会社の公式ツイッターでツイート。これがきっかけで、商品開発そして販売へと至るわけですが、なかなかの策士だと感じてしまいます(笑)。
ただ文房具と食品という異業種の組み合わせは、やはり異質で斬新に感じますし、そんなトントン拍子に進まないのではと感じたところもありました。しかし宮崎さんにお話を伺うことで、その疑問は晴れていきました。
≪様々な視点と発想力による商品の企画開発≫
一つ目はオリジナル商品の展開です。
創設135年となった2018年から販売している万年筆とインクの「長崎美景(別ウインドウが開きます)」シリーズ。創業の地である長崎への思いと魅力を伝えるべく展開している商品です。長崎県内の景色や建造物などからイメージする色を作り上げています。あらゆる色の中からイメージを具現化していくって凄いですね。
また、バーでカクテルを楽しむように、気分に合わせて色を選ぶことができる「カラーバーインク」シリーズ。ネーミングの発想も素敵ですよね。2021年1月現在で84色が展開されています。これだけ色があれば、どんな気分にも合わせることができそうですが、それだけではなく、ぬりえ的な発想で「いろぬりカクテルグラス(別ウインドウが開きます)」なんて準備してしまうところが、遊び心溢れています。
さらに「長崎デリシャスインク(別ウインドウが開きます)」というものまでありました。ちゃんぽんは香り付き。カステラはラメ入りです。長崎の美味しい食べ物を、文房具・インクを使って紹介していくという発想も面白いですし、地元企業だからこそ商品化できたのではと感じてしまいます。
二つ目はコラボ商品の展開です。
何かしらとコラボレーションすることによって、商品の魅力はもちろん、コラボ相手の魅力までも相乗効果で引き上げています。ふんわりやさしい雰囲気のイラストを描かれる村田なつかさんとコラボしたステーショナリーシリーズ「尾曲がり猫と長崎のおいしい食べ物」(別ウインドウが開きます)。イラストも雰囲気あってかわいらしく、使うのがもったいない感じですが、気軽なプレゼントとして、長崎の思い出として購入する方もいるそうです。そして、異業種コラボは、それぞれのファンが入り混じる場にもなっているとのこと。作家を好きな人が文具に興味を持つ、文具を好きな人が作家に興味を持つ。結果、顧客の新規開拓に繋がっているわけです。
≪企画開発した商品に思いを込める、届ける≫
宮崎さんからお話をお聞きしている中で感じたことは、文房具愛に溢れているということ。 新たに商品の企画を考える時も、「万人受けするもの」「売れるもの」を考えるだけではなく、まずは「自分自身もターゲットの一人」と捉えて企画開発に取り組んでいるそうです。それによりモチーフを考える際も他人事にはならず、「あったらいいな」を形にすることに繋がっているのでしょうね。
開発する商品への思いは、売り場の人たちにも伝え、共有することも大切にしているそうです。企画開発にかかわる人たちと売り場でお客様に接する人たちで商品に対する熱量を均一化することで、お客様に商品をお届けすることができる。もともと宮崎さんも店舗の販売員として勤務していて、ポップ作成等を通じて商品の魅力をお客様に伝えていたからこそ、意識している点だと知ることができました。
企画して終わりではなく、商品パッケージの写真撮影やホームページ・SNSを通じての商品魅力発信、インスタライブなど、一貫して商品に係わり魅力の発信を続けています。 様々なアプローチで商品の魅力を伝えることで、文房具好きなコアなお客様を対象とする商品だとしても、その商品に力でしっかりと新たな顧客に広がっていくのですね。
≪まとめ≫
今回、石丸文行堂にお話を聞きに行くきっかけは「岩下の新生姜」インクでしたが、単なる話題つくりだけではなく、今までの商品開発に対する思いの線上にあることがわかりましたし、これまでの取組や実績、そして文房具愛が相手に伝わり実現したのだろうなと、感じることができました。
長崎の老舗文房具店・石丸文行堂。今後のさらなる挑戦も楽しみです。 ご協力、ありがとうございました。
石丸文行堂様のホームページ